「所有のモードhaving」と「存在beingのモード」は二つの「生きる態度」である。「所有」の次元では何かを自分の所有物として占有することが最優先事項になっている。そして、物や人、もっと抽象的なもの(知識や権力など)、それらを量的に豊かに所有すればするほど、幸福度が増すとされる。「わたしとはわたしが持っているもののことである」がこの次元における基本原則である。しかし、所有物を増すことへの没頭は必然的にその当人に不安、疎外感、孤独、空虚感をもたらす。失うことを恐れることなく、安心して所有することができるものなどこの無常の世には存在しないからである。また所有は所有者(主体)と所有物(客体)との溝を生み出すので、所有物に重きを置けば置くほど所有者の「存在」は空虚で皮相的になっていかざるを得ない。これに対するオルターナティブな道が「存在のモード」である。前者から後者へのモードの転換について、仏教の立場から論じてみたい。
■藤田一照(ふじた・いっしょう)
1954 年、愛媛県生まれ。現在、曹洞宗国際センター所長。東京大学大学院教育心理学専攻博士課程を中退し、曹洞宗僧侶となる。1987 年よりアメリカのパイオニア・ヴァレー禅堂で禅の指導を行う。近隣の大学や瞑想センターでも講義やワークショップを行う。2005 年に帰国。葉山で実験的坐禅会を主宰。著書に『現代坐禅講義』(佼成出版社)。共著に『あたらしいわたし』『安泰寺禅僧対談』(以上、佼成出版社)『アップデートする仏教』(幻冬舎新書)、ほか。訳書にティク・ナット・ハン『禅への鍵』(春秋社)など。近著に鈴木俊隆師の法話集「not always so」を翻訳した『禅マインド ビギナーズ・マインド2』(サンガ)、『禅の教室』(伊藤比呂美氏との共著、中公新書)、『〈仏教3.0〉を哲学する』(山下良道、永井均との共著、春秋社)がある。
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